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otak.ayan Part3

takayanの「オタク」部分に関する記事を掲載します。過去にアキバ系SNS「Filn」に掲載した「オタク系」記事の一部も転載しています。

ここまで及んでいる? そしてどうなればハッピー? ――アルケミストからの版権・著作権移転の影響

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ここまで及んでいる? そしてどうなればハッピー? ――アルケミストからの版権・著作権移転の影響

 図面6点を含め、本ブログ最大分量の記事となりますので、「続きを読む」扱いといたします。タイトルをご覧になり、興味のある方だけクリックください。よろしくお願いいたします。


 2015年の年末、「加賀電子」グループで、主にゲーム関係を取り扱っていた「加賀クリエイト」が突然「解散」を発表した。そこから始まったとんでもない状況について、この記事ではまずは過去に遡ってから、その後の状況を現在に至るまで、「男の娘ゲーム・キャンペーン」で取り上げられた三つの作品(シリーズ)を中心に、追跡していく。

「平和な時代」から「まさかの……」へ

アルケミストからの版権移転の影響/1.平和な時代 北海道・札幌を本拠地として(その後本社事業所は千葉県→東京都に)、いわゆる「コンシューマー向け美少女ゲーム」を制作していた会社「アルケミスト」。2002年の『君が望む永遠』のコンシューマー化をきっかけに、美少女ゲームの移植制作に本腰を入れ、その後いわゆる「戯画」やそのパートナーブランドの作品を中心に、さまざまな作品をコンシューマー基盤に移植し、一定の地位を築き上げた。(図1:「平和な時代」)

 そして、その移植作品の中には、「戯画」やそのパートナーブランドでない会社で作られた18禁PC美少女ゲームも多数含まれていた。一時期ネットを賑わせた「男の娘ゲーム・キャンペーン」でまとめてPRされた「女装主人公が女学園に潜入してうんぬん」な三作品もここに含まれる。


(※便宜上、図面ならびに以下の本文内で、コンシューマー基盤への移植版を「C版」、おおもとになった18禁PC美少女ゲームを「X版」と呼ぶ)


アルケミストからの版権移転の影響/2.まさかの…… しかし、一見順調に見えた「アルケミスト」社だが、私から見る限り、『乙女はお姉さまに恋してる Portable ~2人のエルダー』の限定版や、オリジナル作品である『ぎゃる☆がん』など、売れそうな(※実際売れた)作品の初期出荷数を少なく見積もりすぎるなど、センスのなさが垣間見えていたところ、2015年に携帯電話用アプリの販売不調で業績不振に陥り、2015年12月31日をもって会社解散を余儀なくされた。この影響をもろに受けたのが「アルケミスト」社で、2016年年初に倒産を発表、同年4月5日には札幌地裁から自己破産宣告を受け、会社が消滅する、という事態になった。(図2:まさかの……)

アルケミストからの版権移転の影響/3.版権などが移転  この結果、「アルケミスト」社が持っていた各種ソフトの著作権、ならびに「加賀クリエイト」社が持っていた版権は、「アルケミスト」社が手がけた作品に「戯画」ならびにそのパートナーブランドのものが多かったこともあってか、「戯画」ブランドを持つ「エンターグラム」(旧名である「テイジイエル(TGL)企画」の方がピンと来る方もいらっしゃるかと、この版権ならびに著作権譲渡の段階で、業態変更もあり、2016年4月1日に社名変更)に引き継がれることになったのである。(図3:版権などが移転)

版権・著作権以降後の対応はどうだったのか

 さて、この版権・著作権移転で何が起きたのだろうか。まず、エンターグラムは、版権・著作権が移転されたC版作品について「ネイティブにPS Vitaに対応していないタイトルはサポートしない」として、PSP版(それ以前のプラットフォームのものを含む)のタイトルを軒並み「版権を維持したまま販売を凍結」したのである。「男の娘ゲーム・キャンペーン」で取り上げられた三つの作品(シリーズ)もご多分に漏れず、すべてPSP版(『乙女はお姉さまに恋してる』のPS2版も含めて)この対象となった。ダウンロード版や「UMD Passport」(パッケージ版の所有者がダウンロード版を安価に割引購入できるサービス)でこれらのタイトルが販売されなくなったのはこの時期である。


アルケミストからの版権移転の影響/4.移転先からの要求(一部推測)  しかし、話はそれだけでは終わらなかった。版権の「凍結」をいわゆる「モノ質」として、著作権を、それもX版の著作権も含めて移転せよ、と要求してきたのである(のちほど述べる事実から、この部分はほぼ確定的)。(図4:移転先からの要求(一部推測))


 しかも、その著作権主張範囲は美少女ゲームに留まらず、そのメディアミックス版にも及んだと推測されるのである。少なくとも『乙女はお姉さまに恋してる』のアニメ化作品はその影響を受けているためか、どこのアニメ作品配信サイトでも執筆時点では配信されていない。

要求を受け入れたブランドの作品は早速取り込み

アルケミストからの版権移転の影響/5.移転先の要求に応じた?AXL  この(個人的には「過大な」と思う)要求に、「男の娘ゲーム・キャンペーン」対象作品のX版の制作ブランドで、ひとつだけ応じたところがある。それが、『恋する乙女と守護の楯』(通称・「恋楯」)およびその続編を作成した「AXL」ブランドである。「AXL」ブランドは2019年、原画家であった瀬之本久史氏がブランドを離れるのにあたり、この「恋楯」関連作品の著作権を「Team AIGIS」に移転する形を取り、最終的に版権も「エンターグラム」に譲渡したのである(図で「円満分離」と書いているのはそのため、なお二作目「薔薇の聖母」のX版、ならびに一作目のスマートフォン版に関してだけは、関連する版権・著作権がAXLブランドに残っていることがAXLブランドのサイトから判別できる)。それまで版権を凍結し「モノ質」にとっていたことから急転直下、2020年には「薔薇の聖母」のC版、一作目のX版(リメイク版)が立て続けに発売され、その後一作目のC版も発売されている。この取り込みの速さは、さきほど書いた「移転先からの要求」の推測内容の正しさを裏付けするものと考えられる。(図5:移転先の要求に応じた?AXL)

それぞれに抵抗する2ブランド

アルケミストからの版権移転の影響/6.抵抗する複数のブランド それでは、「男の娘ゲーム・キャンペーン」に参加した作品の他の2ブランドはどうかというと、エンターグラムからの要求は受け入れられない、との態度を鮮明にしている。では、消費者側にわかる形で反抗の意思を示している例を具体的に示していこう。(図6:抵抗する複数のブランド)

静かに反抗するWillPlus-Ensemble

 まず WillPlus - Ensemble 側であるが、『花と乙女に祝福を』以降の作品が移植対象となっていないこともあり、「静かに」反抗している、といったところだろうか。ただ、何もしないというわけではなく、2019年12月に、それまでの「Ensemble 乙女シリーズ」(※註:単に「乙女シリーズ」と言うと、Navel ブランドの「月に寄りそう乙女の作法」関連のシリーズものも「乙女シリーズ」と言われることがあるため、あえて "Ensemble" を前に付けている)の主人公キャラクター7名による「女装主人公アイドルプロジェクト」を銘打った『シャイニー・シスターズ』(非18禁だが18禁美少女ゲーム販路にて販売)を発売している。いままで予約特典として付けていた「女装主人公(集合)ミニゲーム」をわざわざ単独の作品として世に出していることからは、十分な反抗の意思をうかがい知ることができる。

徹底的に反抗するEXNOA-キャラメルBOX

 次に ホビボックス→ティーアイエス→EXNOA(この移転については図6に示したが、実は2010年の時点でキャラメルBOXはホビボックスの一部隊になっており、2011年には「ソフト開発部」として完全に吸収されている) - キャラメルBOX 側であるが、こちらの反抗は極めて徹底的だ。毎年夏冬に『処女はお姉さまに恋してる』(通称「おとボク」)シリーズを中心としたグッズの販売を行い続けるほか、一・二作目のX版を統合した『処女はお姉さまに恋してる 1&2バック』は、当初は期間限定販売の予定だったが、現在ではパッケージ版として常時流通されている。この二作品のC版(※註:PSP版に限定)がキャラメルBOXとアルケミストとの共同作業により作られたこともあり、著作権移転には断固として対抗する、という強烈な意思表示だ。さらに2018年2月にはシリーズ三作目「3つのきら星(トリンクルスターズ)」を発売、しかも今冬そのアニメ化作品(OVA)まで発売するという。このOVAの著作権表示は「EXNOA LLC」すなわち「合同会社EXNOA」そのもの(製作会社側サイトの著作権表記は「KINEMATICS」に改められたので、作品全体の著作権は二社表示になる可能性がある)である。すなわち、このアニメ化は「自作自演」とも言えるのである。そこまでしてでも、と驚くばかりの反抗ぶりだ。

では、どうなればハッピー?

 最後に、どうなれば「作品を楽しむ側」からみてハッピーな結論に至れるのか、そのことを考えていきたい。これに関しては、私が "まとめサイト" を運営してきた『処女(乙女)はお姉さまに恋してる』シリーズに絞って考えてみたい。


 このシリーズにおいては、第二作「2人のエルダー」において、CEROの倫理規定に基づき、ヒロインのひとりについてそのテーマがコンシューマー版移植に際して不適合である、という理由もあって、X版とC版とで「2人のメインヒロインの交代」というドラスティックな変更が行われたため、X版とC版の両方をプレイしないと最終的に8人になったメインヒロインすべてのストーリーを楽しむことができない、という "特殊事情" が存在する。このため、近年より「おとボク」シリーズのファンになった人においては、この二作目のC版について、出回りの少ない中古市場から、しかも今となっては古いPSPのハードを持っていない場合はこれも中古市場から仕入れて楽しむ必要がある、という極めて高いハードルが設定されている。また、二作目のサウンドトラックも、PSP版の限定版のみに添付される形で発表されたため非常に入手しにくくなり、さきほど触れた一作目のアニメ化作品が配信されないことと並び、twitter などからも不満の声が数多いところである。


 C版の版権・著作権について、エンターグラムに正当に移転されたことについては、法的に正しいし、そのことについて異議を申し立てようもない。これは厳然たる事実である。問題は、その版権をモノ質に取り、X版の著作権と版権も寄越せ、という態度にある。女装主人公潜入ものの金字塔として、後世に残すべきものとしての評価を得ていると考えてよい第一作および第二作について、その著作権・版権を完全譲渡することは、ライバル会社の戦略に屈することでもあり、その交渉が成り立つことはどう見ても考えられない。かと言って逆にC版の版権と著作権をキャラメルBOXに戻せ、という交渉(註:しているとしたら、という仮定で話している)もまた、「正当に移転されたものは断固として譲らない」となる論理に非はあるまい。また、EXNOA自身に(どこかに依頼することも含めて)C版の作成能力があるか、という問題もまた存在する。美少女ゲームのコンシューマー基盤への移植版は、ほとんどの作品でビジネスとして成立するだけの売り上げが上げられない状況がここ数年続いており、体力のあるメーカーがほとんど存在しない、というのが偽らざる現状であり、この中で移植開発をお願いする先があるか、といえは「極めて微妙である」としか答えようがない。


 ならばこうだ。EXNOA・キャラメルBOX側より、C版の著作権・版権がエンターグラムに移転したことを認め、第三作を含めてC版の作成・版権・著作権(連名)を持つことを認める。またC版関連のグッズ販売も認める。その上で、エンターグラム・戯画側より、X版の著作権・版権がEXNOA・キャラメルBOX側にあり、移転しないことを認める。そして、お互いライバル会社ではあるが、必要に応じてC版の共同制作を行う。


 ただでさえ、いわゆる「ソシャゲ」などとの「時間とお金の取り合い」を主要因として市場が縮小していると噂される美少女ゲーム業界において、ライバル会社だからと言って喧嘩している暇があったら、どうやって市場を維持(できれば拡大)できるか、を真剣に模索することこそ、必要なことなのではないか。この案件についても、可及的速やかに解決されることを、心から望むところである。




 追記:私個人的には、シナリオライター自身の二次創作だったはずが、いつの間にか "公式外伝" になった『乙女はお姉さまに恋してる~櫻の園のエトワール』(ファミ通文庫、廃版)についても再販か少なくとも電子書籍化を強く要望するところである。

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